ヤマハのグレード試験は、
- 幼児科修了生のための基礎グレード
- 鍵盤初期学習者のための13~11級グレード
- 音楽の学習者のための10~6級グレード
- 指導者を目指す人のための5~3級グレード
- より高い演奏者のための2級グレード
と目的別になっています。
音楽の学習者のための10~6級については、
Aコースはこちら
Bコースはこちら
で紹介していますが、今回はさらにレベルの高い5~3級のグレードについて解説していきます。
講師になれる?グレード5~3級のウワサについて
よく聞かれるグレードについての話で、「グレード5級を持っていると講師として働ける」というのがあるのですが、
これはほとんど正しくないウワサです。
ヤマハ音楽教室で講師の仕事をするには、
ヤマハの「講師資格試験」に合格する必要があります。
試験を受ける時点で、グレード5級程度の音楽力を持っていることは求められますが、必ずグレードに合格していなければいけないということではありません。
グレードを取得しているから必ず資格試験に合格できるわけでもありません。
ただ、講師をしていく上でグレードを取得していくことは求められるので、ほとんどの講師は5級以上のグレードを取得しています。
なお、自宅等でピアノ教室などを開く時には、資格などは必要ないですが、音楽力の担保として、「グレード○級を持っています」ということを掲げている教室もあるかもしれません。
グレード5~3級の内容は?
ヤマハのグレード5~3級は、
- ピアノグレード
- エレクトーングレード
- 指導グレード
の3種類に分かれます。
試験内容を紹介していきます。
ピアノ、エレクトーン5~3級の内容
ピアノグレードとエレクトーングレードは内容が共通で、
①即興演奏
②初見演奏
③楽曲演奏
の3つの項目です。
即興演奏
即興演奏では、
課題のメロディーにふさわしい和音をつけて、変奏・編曲などをする通称「A即興」と
2小節程度のモチーフを1曲にまとめるモチーフ即興(通称「B即興」)
の2曲を演奏します。
課題のメロディーやモチーフを見られるのは、試験の直前の予見時間(10分間)なので、その場で曲を組み立て表現する力が求められます。
初見演奏
初見演奏では、初めて見た楽曲を20秒の予見の後に演奏します。
曲の難易度は5級→4級→3級と難しくなっていきます。
楽曲演奏
楽曲演奏は、「課題曲」と「自由曲」、3級のみ「自作曲」を演奏します。
「課題曲」の楽譜は、ぷりんと楽譜で販売されています。
その級の課題曲の中から1曲選び、その1曲を演奏します。
「自由曲」は、5~4級は3曲、3級は4曲用意していき、当日その中から指定された1曲を演奏します。
「自由曲」の選曲は、
『一般に出版されているピアノ(エレクトーン)のための楽曲から選曲してください』
と記載があります。
エレクトーンは5級または5~3級と記載のある楽譜から選曲します。
ピアノは難易度の目安があまりありませんが、自身の実力をしっかりと発揮できる楽曲を選曲します。
個人的な感覚での目安ですが、バロックで言うと
ピアノ5級→インベンション程度
ピアノ4級→シンフォニア程度
ピアノ3級→平均律など
というイメージです。
3級のみ、「自作曲」の演奏があります。
当日楽譜を持参し、試験官に提出します。
難易度の高すぎるものを作る必要はありませんが、自身の実力をアピールできるものを用意します。
指導グレード5~3級の内容
指導グレードは、
①実技試験
②筆記試験
の2つの大きな項目に分かれます。
音楽の知識や理解がどの程度あるか、またそれを使いこなせるかなどを確かめるような内容です。
それぞれの内容を紹介します。
指導グレードの項目、内容はとても細かいので、詳細については≪こちら≫にまとめました。
実技試験
指導グレードの実技試験の内容は、
メロディー視唱
弾き歌い
伴奏づけ
移調奏
です。
筆記試験
指導グレードでは、筆記試験もあるのが演奏グレードとの大きな違いです。
5~3級まで共通で「聴音」、
5級はその他に「楽典」「コード進行法」
4級は「楽典」「コード進行法」「和声法」
3級は「合唱編作」と「コード進行法」
です。
グレード5~3級、どのくらい難しい?
「ヤマハのグレードは落ちない」と聞いたことはありませんか?
学習者のためのグレードの10~6級は、ほとんど不合格になることがありません。
一方でグレード5級以上は、「落ちる」グレードです。
それは、採点方法や基準の違いにあります。
グレード6級までの採点方法
グレード6級までは、各項目を10点満点、合計50点満点で評価します。
大まかには、その級の基準程度できていると7点、そこからプラスマイナスしていくような採点方法です。
総合評価でS~Cのランクはつきますが、(D、Eは不合格)、25点以上で合格なので、
すべての項目が5点(基準よりマイナス2点)でも合格となります。
これが6級までは落ちない理由です。
グレード5~3級の採点方法
私自身が5~3級の試験官をしたことがあるわけではないので、あくまでこれまで受験してきた経験からの予想です。
ここでは、演奏グレードに絞ってお話していきますが、5~3級は、
楽曲演奏40点、即興演奏A20点、B20点、初見演奏20点の配点で、合計100点満点で評価します。
合計が75点以上で合格となります。
これらのグレードでは、合格基準の75%の点数(楽曲は30点、その他は15点)をプラスマイナス0の点数として、
そこからプラスマイナスしていくような採点方法ではないかと思います。
つまり、例えば即興演奏Aの場合、「ここが良いな」「ここが工夫されているな」という良いポイントがあると16点、17点というプラスの点数、「テーマのメロディーが間違っている」「変奏の工夫が物足りない」など悪いポイントがあると14点、13点というような採点がされるイメージです。
合格者の中でも、すべての項目プラスマイナス0で75点での合格、良かったポイントがあった項目がプラス点、悪かったポイントがあった項目がマイナス点で相殺して75点での合格、という方が割合としては多いと思います。
何か悪いところがあり、他でリカバリーできないと不合格になってしまうので、合格率はあまり高くないと思います。
音大生でも落ちる?ウワサについて
グレード5~3級の難しさを表す表現として、「音大生でも落ちる」と言われることがあります。
演奏力が申し分ないはずの音大生や音大出身者でも、グレード合格に苦労するケースがあるようです。
音楽の経験は深いけれどグレードに苦労するケースの原因として大きいのは、
- 課題曲の解釈
- ヤマハ独自のスタイルがある即興演奏
の2点だと思います。
まず、課題曲については、JOC作品というヤマハの生徒だった方が作曲した曲が課題になっています。
一般的に有名ではない曲のため、自分自身でアナリーゼして演奏する必要があります。
曲が簡単だからと弾き込みが足りないと点数をもらえない原因になります。
自由曲とは違い、用意した曲を必ず演奏することになるので、一番力を入れて練習すると良い項目です。
次に、即興演奏についてです。
即興演奏は、どのようにまとめても良いという訳ではなく、ある程度の型があります。
ヤマハの即興演奏を経験したことがない方が受験を目指す場合、グレード取得講座に通ったり、実施例が載っている問題集を用意したりして準備する必要があります。
以上のことから、簡単には合格できない試験であると言えると思います。
【まとめ】音楽の世界がかなり広がるグレード5~3級
いかがでしたか?
6級までとはまるで世界が違う5~3級について、少し理解が深まったのではないかと思います。
レベルの高い試験ではありますが、ヤマハ音楽教室に通い6級を取得した中高生に、ぜひ目指してもらいたい目標でもあります。
より実践的な、活用できる音楽の力をつけていってもらいたいです。